やせっぽちのBoogie(仮題) 第4回
ポニー(イメージ画像)
ひこ(イメージ画像)
ブッダ(イメージ画像)
映画館主、ポニーの朝は早い。
※1朝日会館の劇場主でもある彼は劇場の最上階の別室にリスニングルームを設けていて、劇場は朝9時半に開店するが早朝から引きこもって昔の名画や問題作をソコで観るのが習慣になっている。
「最近の映画はCGばかりでおもろないのう~、二昔前のエテ公ゴーホーム(E.T)やレイダースの方がまだましやったしあの頃は高校生の社会見学もあって大儲け出来たけどなあ~・・・・・・」
この男は1950年代のハリウッド黄金時代の名画やヨーロッパ映画は全て網羅しており、年間封切り映画の試写も含めて1000本は確実に観る鑑賞のマエストロでもある。
F・F・コッポラがフェイバリット監督で彼の映画「ゴッドファーザー」と「地獄の黙示録」は通算で74回は確実に観ているのだ。
彼は朝日会館以外にもう一館、※2ビック映劇を所有しており、リスニングルームを出てそちらに向かった。
ひこはライト級の強豪ボクサーで次戦が世界挑戦試合で神戸ワールド記念ホールで開催予定である。
「社長!おはようございます!!」
「ひこ君、次の試合の応援はわが社の社員総動員と東宝の関係者も呼ぼうと思っているんだ、もうバイトはいいから試合に向けて練習に専念すればどうかね?」
「いえ、まだ試合まで間がありますのでソレにココに来て仕事をしていると精神的にも落ち着くのでもう少しお願いします!」
ひこは世界1位で指名挑戦者であり、兵庫が生んだプロスポーツの英雄になる可能性のある若者でもある。
この映画館で受け付けや映写の仕事をしつつ、馴染みの観客にはブルース・リーの物真似をして笑いをとるひょうきんな1面もあるのだ。
Wild Honeyではシドと気ままにが旧交を温めながら、久々の再会を喜び合っている。
「コッチに戻ってきたって事は何かあったんだよね??」
「ええ、まあ、、、、、」
店内にSGTやKTもいる手前、察してくれよと合図をしたので気ままには咄嗟に判断してソレ以上事情は聞かなかった。
「そういえば、最近又再結成したりして人気が出てきたんよね、コレ」
と、レコード棚から出そうとした手にかぶさる手があった。
「ああ~毎度!」
ブッダは若者でありながら1960年代の音や南部サウンドが大好きなのだ。
「マスター!コレってどうなの?」
「歴史的名盤、その一言やね」
ブッダが気ままににどうか聞いたアルバムはCSN&Yの「デジャ・ヴ」であり、気ままにがシドにオススメしようとした盤も同じだったのだ。
「マスター、間違いないだろうけど念の為に試聴させてね」
3人と店内の数人の客はCSN&Yの名曲を心地よく聴きいった。
(第4回終わり)
※1朝日会館→関西随一の大スクリーンを誇る大劇場、3階まで客席があり全盛時は高校生の社会見学の一環になっていた大映画館、1990年代に入り惜しまれて廃館となりミニシアターホールに現在、変貌。
※2ビック映劇→いわゆる2番館であるが良質な映画を提供するので有名だったが、阪神淡路大震災後廃館となる。