やせっぽちのBoogie(仮題) 第5回
ともきち(イメージ画像)
EJ(イメージ画像)
ちゃーりー(イメージ画像)
額縁画材販売店※1NISHIKIはあと2カ月で廃業し、そこの従業員も解散となる。
画家のともきちはそこの従業員でありながら油絵が専門の画家でもある。
つい先だって大阪の心斎橋の個展では40号のサイズの静止画の油絵が300万円で落札され、神戸ではかなり名の知れた画家でもある。
だからといって彼女自身、職業画家として今後も生きていくつもりはなく沢田研二の様なハンサムガイと結婚するのを夢と描いている乙女でもある。
このNISHIKIに勤めだして10年以上になるが、今後の再就職先は決まっていないが芦屋在住の自分を愛してくれる婚約者の存在はあるので、特に今後生活に困るわけではないがその彼の専業主婦になれば?というささやきも有難いのだけれど、一抹の寂しさを感じているのである。
こういう落ち込んだ時は彼女の歌声を聴くのに限るわねって感じで、2階の画材売り場でパティ・スミスをかけながら接客をしていた。
EJは新進気鋭のイラストレーターでココでの超お得意さんで今日も朝から、画材を買いに来ていた。
ともきちとは古くからの彼が学生時代からの友人でもある。
そして彼はミュージシャンでもありKINGと昔、組んだバンドでYAMAHAポプコンの本選まで進出し、メジャーデビューレコード発売寸前まで行ったところで、そこまでのプロ志向がないのとKINGらの目指す音楽の方向性に疑問を感じた部分もあり脱退する。
大阪や兵庫ではKINGと並びミュージシャン仲間では彼の名を知らないモノはいなく、KINGとは未だにJOINTでLIVEを一緒に楽しむ仲ではある。
個人的には重たいビートのルー・リードの「スイート・ジェーン」の様な曲が好みなのだ。
今でもハープ奏者としては素晴らしい1級品のアマチュアの奏者でもある。
「ともっちさあ~、この店もあと2カ月か、寂しくなるね」
「そうなのよね~、なんかさあ~ワタシの青春時代とともにあったお店だから心にぽっかり穴が開く感じなのよね、、、、、、」
「今日の晩、暇かな?よかったら※3タートルズで飲まない?俺が奢るからさ」
「ありがとう、EJ!じゃ仕事終わったらメール入れとくわ」
Wild HoneyではSGTとKT、ましんとコシ師匠が気ままにの紹介の元、早速どんな感じでバンドの音を出そうか?相談している。
「90年代にガールズバンドでエラスティカっていたでしょ、あーゆうちょっとアンビエントな感じどうかしら?」
「いいんじゃない!」「俺は女性陣がセクシーにPLAYしてくれたら何でもいいよ」
「とりあえず※2リードマンを抑えて2時間程、音合わせしようか」
4人それぞれウキウキした、それでいて少し緊張した面持ちで話し合いをしていた。
「じゃあ明日の19時にリードマンって事で」
コシがスタジオを電話予約で抑えた。
「とりあえず新バンド結成前祝いってことでさ、タートルズに今晩飲みにいこうよ」
気ままにがとりあえずオススメレコードを10枚ほど抱えたシドの後ろ姿に声をかける
「久しぶりだからタートルズで飲もうよ、店締めたら行ってるからね~」
シドは後ろを振り向かず、後ろ手で了解の合図をした。
「マスター!タートルズって僕も行っていい?」
「ああ~おいでよ今晩は色んな面白い人に会えると思うからまた閉店前にココにおいでよ」
ブッダは嬉しそうにうなずきながらCSN&Yのレコードを抱えて、店を出た。
一連の様子を眺めていた眼つきの鋭い客が気ままににつぶやいた。
「マスター、タートルズって面白い店なの?」
ちゃーりーは興味深そうに聞く。
「そうなんですよ、お客さんも一度覗いてみたらいかがですか?面白い店ですよ」
ちゃーりーはいわゆるPILの様な音を出すバンドでタイコを叩いていたが諸事情が重なり、バンドは空中分解したばかりだったのだ。
(第5回終わり)
※1NISHIKI→1980年代半ばまで神戸三宮センター街に実在した5階建ての画材販売店、芦屋在住のオーナーがカナダに移住して廃業するので貸しビルとして、オンワードに当時敷金5億円、月額家賃300万円で手放した。
※2リードマン→神戸で一番メジャーな楽器販売店兼貸しスタジオ。
※3タートルズ→三宮阪急裏にあるHIPな連中が集まるBAR、イカした雇われマスター、キヨモジが楽しい♪