ワイルドバンチ
映画「ワイルドバンチ」は1969年に発表されたサム・ペキンパー監督の最高傑作と言われる最後の西部劇である。
この映画が何ゆえに最後の西部劇と言われているかという所以は西部劇の象徴である幌馬車ではなく車が登場するかららしいのである。
つまりこの映画の製作年も激動の1969年で映画にも近代化の象徴である車を登場させることによって暗に新時代を象徴しているようになっているわけだ。
お話の方は1913年のメキシコが舞台でパイク(ウィリアム・ホールデン)というリーダーが率いる強盗団を、30日の間に彼らを捕える条件で仮出獄を許されているソーントン(ロバート・ライアン)が追うという逃亡劇の中、メキシコの大将マパッチ将軍の依頼で、米軍の銃火器を強奪するという小少、ゴチャゴチャしたストーリー展開で分かりずらい部分が前半から中盤にかけてある。
だが強奪した銃火器の引き渡しの際に、マパッチは難癖をつけ、パイク一味の一人のメキシコ人エンジェルを人質に取る。
いったんは引き下がったパイク一味は準備をすませると、エンジェル救出のためマパッチ軍に凄絶な殴り込みをかけるが果たして・・・・・・
この映画に出てくる登場人物は全員、悪人と言っても差し支えないであろう。
娼婦宿の娼婦でウォーレン・オーツが大して金を払おうとしないケチくさい処を責めているのも含めて全てだ。
又、銃撃シーンでも女でも銃火器を持てば男を撃ち殺すシーンなんかもあったりしてペキンパーの女性観も垣間見える。
強盗団が米軍に罠を仕掛けて橋を大爆破するシーンとか、マパッチが残虐な男で簡単に人を虫けらのように殺すシーンであったり、ラストの壮絶な銃撃戦など全てのシーンが映画史上に残る名シーンであると断言したい。
この世は金が全てで情や憐憫など一銭にもならないっていう徹底的なリアリズムとペキンパーの滅びの美学が映像で昇華している1960年代の傑作ニューシネマである。