やせっぽちのBoogie(仮題) 第2回
BLUE(イメージ画像)
BLUE(イメージ画像)
KING(イメージ画像)
シド(イメージ画像)
KINGは明るい陽気な調子だ。
「久しぶりだね~、いつ神戸に来たのよ?」
シドは愛称と尊敬の念を込めて彼をおっさんと呼ぶ。
「おお~昨日や、BLUE女史から急に呼び出しがかかったんよ」
シドは私立探偵で一昨日まで、結構大きなヤマを東京でチームのアタマとして陣頭指揮し、調査中だったのだが雇い主でもあり恩人でもあるBLUEから急に呼び出しがかかり神戸に舞い戻ったのである。
早朝散歩が終わり、二人してシドのヤサに戻るとBLUEが立っていた。
「おはよう、シドちゃん久しぶりね、横のおじさんはフフフ、目やにがついているわよ」
「BLUEちゃーん、コレが最新のファッションなのよ、分かりーる\(◎o◎)/!??」
KINGは50代後半くらいのどこにでもいそうな風体のおっさんであるが、その昔神戸では知らない人はいないと言われた伝説のミュージシャンで今も、さりげなくパンツやシャツなどは地味ではあるが帽子やマフラーなどの小物はお洒落でこだわりがある男なのだ。
「とりあえず※1上高地でお話しましょうか」
喫茶「上高地」は三宮のいわゆる阪急裏といわれる処にある喫茶店でレギュラーコーヒー1杯が500円以上する関西では高級喫茶に類する喫茶店である。
「今日もおごってくれるの~ありがとうね~」
BLUEとKINGは昔からの友人で付き合いは古い。
しかしはっきり言って昔はどうか知らないが、今は常に会うとKINGが食事を奢ってもらい無心をするのが当たり前になっている。
二人のこの関係は今もって不可解で不明である。
「別にお代はいいからあなたは向こうのテーブルで適当に注文してね、私達は大事な話し合いをしますから!」
「ヘーイ!!チェッ俺もよせて欲しいのにさあ~ダメ~??」
といった瞬間にBLUEに睨まれたKINGはコレはマジな話だなと察知してすごすご向こうのテーブルに引き下がり、ウェイトレスのお姉さんをからかって遊んでいる。
「シド、実はさ今この街がヤバいんだよねそれであなたに来てもらったのよ」
小一時間、今回の仕事の大まかな内容を聞きシドの顔に緊張が走るが持ち前の度胸の良さと明るさでその場をやり過ごすが大変な状況を把握しつつ今後の計画を練ろうととりあえず頭の中で簡単な絵を描いた。
「じゃね~BLUEちゃん、御馳走さん!シドちゃん後で電話するね~!」
二人ともKINGの言葉は耳に全く入っていない。
「それじゃとりあえずコレ、みなと銀行の口座とキャッシュカードと暗証番号のメモね。とりあえずの活動費は入れてあるけど足りない時はメールか電話を頂戴」
BLUEとシドも店を出てその場で別れた。
このBLUEという女、年齢不詳の謎の女である。
見た目は20代の小柄な女性に見えるが肝の据わり方が半端ではなく、いくつかの修羅場をくぐりぬけてきた女傑のようである。
一説には芦屋生まれの資産家で神戸三宮、※2元町界隈の不動産、店のほとんどの所有者らしい。
もう朝10時を過ぎていた。
「おっそういや※3Wild Honeyに行って気ままにさんの顔でも見に行こうか」
シドの足は三宮から西に足が向いていた。
(第2回終わり)
※1上高地→1970年代からバブル時代にかけてディスコでオールナイトした若者が朝まで過ごすのによく利用した高級喫茶店、ワンランク高いセットメニューのない喫茶店
※2元町→三宮西に位置する神戸第2の歓楽街、中古レコード店が多く中華街もあり又、モトコータウンと呼ばれるJR高架下の商店街は怪しさ満点ワールドな街
※3Wild Honey→気ままにが経営する中古レコード店