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怪談  おとし穴


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夏の終わりらしく怪談を語ろうじゃないか。

怪談噺というのは基本、創作で落語で語られることが多い。

つまり日本の芸能文化に深く根差したエンターテイメントと言える。

こういうのは諸外国にもあるのだろうがある意味独特で食文化とともに世界に誇れるものであると個人的には思う。

いわゆるジャパニーズホラーの不条理な恐怖も怖いのだがやはり個人的には恨みつらみを買い呪われるという教条的なモノが怖い。

俺は無宗教だが恨みつらみとか念みたいなのは信じる。

こういう個的な恨みつらみを全ての人間が理解していれば争い事は消滅すると信じている。

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成田三樹夫という俳優はオールタイムの俳優の中でも個人的に好きな俳優のBest10には入ります。

この人のように知性とニヒルを感じさせ、またお笑い感覚にも長けた俳優は稀有である。



でこの映画「怪談 おとし穴」なんですが1968年作の現代劇の怪談映画である。

個人的にはオールタイムで映画、TVなどで一番怖かったのが大病院の院長が自分の娘が猫女のような顔に生まれたために顔に整形を施しても変わらない楳図かずお原作の「怪談 整形美女」?とかいうタイトルのドラマがトラウマで怖かったのですがとにかく人間の情念、特に女の情念を描いた怪談物はとにかく怖い。

時は1968年、ある貿易会社の重役サラリーマン(成田三樹夫)が自分の立身出世のためだけに恋人(渚まゆみ)を殺し、社長の一人娘(三條魔子)と政略結婚を狙うがその殺した女の亡霊に呪われるという話である。

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この映画の肝は時代背景である。

俺みたいな馬鹿な宮仕えの立場の男でも社長令嬢と一緒になれば一生安泰やと思ったりも冗談でもするもんだが、命がけで立身出世を狙うサラリーマンからしたら、本気でそういうのを考え実行したりするのだ。

このサラリーマン男(成田三樹夫)は自分の恋人をそれこそ取引役の重役にあてがったりして大きな取引をまとめたりして、女からしたらある意味鬼畜のような男でもある。

さんざん利用した自分の恋人を邪魔になったからと言って殺すのはそりゃ恨まれてもしょうがないやろうというのもあるが、現実社会にもよくある話で仕事の出来るモテるサラリーマン(俺には全く縁がない)には少々耳が痛い話かもしれない。

因みにこのおとし穴というのはエレベーター内の一番下のピット(かごのさらに下の穴)と思われる。

超高層ビルの中の立身出世に狂った男の憐れな物語であり、当然この映画を観た人間は寒気をもよおすのである。

因みに成田三樹夫氏のフィルモグラフィーから封印されている映画でもある。