逃がれの街
水谷豊って俳優を過小評価していないかい?皆さん。というより俺がそうであったのだ。
今現在の彼氏の活躍は興味がないが根底にあるアンダードッグ的視線の演技は少なくとも今の若手俳優になかなか出せない味わいがある。
この映画は1983年に公開されました。
余程の映画好きか、水谷豊ファンでないと観ていないか観た記憶がない御仁が多いであろう名作である。
映画興行自体、1980年代なんてのは洋画以外は風前の灯火という声もあったが俺はまったくそう思わなくて、80年代は邦画も結構俺の中では質の高い映画がありましたが、コレもその一つです。
原作はハードボイルド作家、北方謙三の初長編でもある。
ギリギリ俺らの世代でももちろん当時に青春を過ごした者にはわかる貧困(この時代なりの)ゆえに不幸が起きる様をも描写している。
実際に殺人犯になった友人と旧交を温めたために、そいつが減刑のために?共犯が水谷(幸二)と証言したために必死になってアリバイ探しをする。
当時の恋人、甲斐智恵美演じる牧子と一緒に居たのを取り付けようとしたが牧子はたぶん?女子高生で面倒なことに巻き込まれるのが嫌で応じなく逮捕拘留される。
牧子はしかしながら無罪釈放となった幸二のもとに身を寄せるようになり束の間の安息を幸二は得る。
ホントの殺人犯になってしまった幸二は錯乱状態になり、みなしごを街中で見つけ自分と同じ境遇に感じ、連れ去る。
ヤクザの弟分にみなしごを一度は誘拐されて、取引の中で弟分をも幸二は殺してしまう。
みなしごを奪還し、みなしごの親戚の政治家の選挙資金(綺麗な銭ではない?)を強奪して雪山に上り、別荘の小屋に籠城する幸二を一容疑者だった時から見守っていた黒木刑事(夏八木勲)は、哀れな若い男に対して銃を向けざるを得なかったのだ。
水谷主演の同時期の映画で「幸福」というエド・マクベーイン原作の秀作もあるのですがこの映画は封切り当時は観れなかったのですが、後にビデオか何かで観て痛く感じたことがある。
そう80年代の話なんで俺みたいなボンクラなんかもいつなんどきこういう災難が降りかかって、犯罪者になるかもしれん怖さとリアル感であった。
幸二がバイト先(運送会社)でふてくされていたら上司(阿藤快)が元プロボクサーで喧嘩自慢の幸二が一発でKOされるところなんか、当時の肉体労働系の現場でごろごろあったことで、なんか近いことが自分の現実でもあったからね。
熱中時代や相棒しかしらない人にはぜひ見て頂きたい映画でもある。
水谷豊の本質は気の弱いしかしながらそれでもあがいてあがいて必死に生きようとする姿が一番似合うということを。「青春の殺人者」や「太陽にほえろ、傷だらけの天使、探偵物語」での彼氏の演技をご存知の人にももちろんお勧めです。