大ぼら一代
1950年代~70年代に生を受けた男子にとって一度は本宮ひろし作画の漫画を読んだことのある御仁はかなり多いかと思われます。
その中でそれぞれの年代にもよるのですが、どの本宮漫画が好きってアンケートを取れば「男一匹ガキ大将」「硬派銀次郎」「俺の空」「さわやか万太郎」「サラリーマン金太郎」なんかが上位に来るかと思われる。
この「大ぼら一代」をフェイバリットにあげる人は少数派と思われる。
だけど自分はコレが彼の作画した漫画で一番好きである。
この漫画の主人公の丹波太郎字は持ち前の度胸と努力と才覚によって町の夕焼け番長から総理大臣にまで昇りつめようとする男である。多分、学歴は中卒で。
こう書きますと昭和の傑物、動くブルドーザーと異名を取った田中角栄を想像する人も多いと思いますが、実際本宮は同時期に少年誌において短編集で田中角栄のロッキード事件の真相を追う記者の物語を執筆していた筈で、何かしら彼にシンパシーを感じていたのかもしれない、よくここまでエグった内容を描写出来るなあ~って当時、感じたとともにこの漫画にもその影響は垣間見える。
ラストの壮大な幕引きは当時のニューシネマや三島由紀夫、世紀末思想が相まってとんでもない結末を迎えるのであるが、男やったら土性骨据えてこんな太郎字みたいな奴になってみたいもんやと夢想し、自分にも気合いを入れた記憶がある